貯金箱を割って…【代表北村の教育ちょこっとコラム】

今から30年近く前、私がまだ大阪の開成教育セミナーの社員だった当時の話。中3の女の子でYさんという塾生がいました。彼女の家庭は円満で、何不自由のない暮らしを過ごしていたのですが、その年の秋にお父様の勤める会社が倒産し、塾にも通えなくなるという状況に追い込まれていました。
そんなある日、塾の教務室に大きな紙袋を抱えた彼女が現れて、「先生。うちなぁ、どうしても冬期講習受けたいねん。うちの貯金これだけしかないけど、必ず残りは払うからお願いします!」と言うなり、「ガチャーン」と大きな音がして、ネコの貯金箱が目の前で粉々に。私たちは驚きの余り、言葉を失いました。
当時の中3生の冬期講習費は確か4万円以上。貯金箱の中には、小銭ばかりで2万円ほどあったようです。もちろん、そのお金をそのまま受け取ることなどできません。だからと言って、彼女のこの決意と気概を私たちは無駄にしたくなかったので、ご両親の了解を得て一時的に預かり、合格発表の日に「お祝い」として彼女にそのまま手渡しました。 その冬期講習で、授業を受ける彼女の目の輝きは今でも忘れません。それと、あの貯金箱が割れるシーンも…。
入塾時の通知表は、3と4混じりだったYさん。2年間で大きく伸びて、結果は大阪第1学区トップのK高校へ見事合格。母となった現在も、会社幹部として活躍しているそうです。私にとっては、甘酸っぱい思い出として心に刻まれています。